Christmas Kiss
なにせ戦時下なものだから、ミネルバには、祝日も休日も関係ない。
いつだってみんな艦内を駆け回って、基地に入れば仕事の合間に上手いこと休暇を取る。
そんな戦艦の中でも、やっぱり暦は存在するものだから、例えばプラント独立記念日とか、クリスマスだとかになれば、なんとなくみんな、浮き足だってきて。
しかし、シンの恋人、アスラン・ザラは、そんなことに気がつくほど、聡い人ではなかった。
「アスランさん、クリスマスイブ、空いてますよね？」
人一倍忙しそうな人を、セイバーのコックピットでやっと見つけて、シンはコンソール越しに、そこに頭を突っ込んだ。
あ、ここ、アスランさんの匂いがする。
「２４日か？２５日までに海上演習の計画書を仕上げてしまいたいんだが・・・」
なにやら、弄っちゃいけないんじゃないかというような基板をバラしていた人は、顔だけ上げてそう答えた。手は、部品を持ったままだ。
「それ、どーしてもその日にやんなくちゃいけないんですか？」
「いや、そう言うわけじゃないんだが・・・お前、キリスト教徒だったか？ああ、それなら２５日か」
「・・・違いますけど」
「ならいいだろ、別に。あ、そこ押さえておいてくれ」
シンにコンソールの蓋を押さえさせ、コードを繋げて一息ついて、そのままアスランは、「ありがとう」とだけ言って、また別の基板に取り掛かる。
「よくないですよ。クリスマスに恋人と二人っきりって、ちょっと俺、アコガレだったんですよ！」
年頃の少年らしいシンの言い様に、アスランはやっと手を止めてシンを見上げた。
「お前・・・子供だなぁ」
「子供じゃないですよ！」
顔を真っ赤にしてわめく少年に、アスランは慌てて首を振る。
「いや、けなしてるわけじゃない。なんていうか、可愛いなと」
「可愛いって言うな！」
「ん・・・・」
他にどういって言いか皆目わからずに、アスランは困った顔をして首を傾げた。
「いや、怒らせるつもりじゃなかったんだが・・・その・・・お前も、男の子なんだな、とか」
「アンタ、それ訳わかんないですよ・・・」
わけわかんな過ぎて、なんだかどうでもよくなってきた。
「もう何だっていいです・・・で、クリスマスイブ、空けてくれるんですか？」
そう、大事なのは、そこなのだ。
「わかったよ。計画書はもっと早く上げておく。それでいいだろ」
言うことはそっけないけれど、アスランはひょいと手を伸ばしてシンを引き寄せ、軽く、触れるだけのキスをしてくれた。
「っ、ありがとうございます！」
たったそれだけのことで、あっという間に機嫌を直してにこにこしながら帰っていくシンを見送りながら、アスランは少し、笑う。
可愛い、な。
シンに言うと、怒るけど。
殺して殺されてのこの仕事のことを、彼がまだよくわかっていないだけかも知れないけれど。
それは、ちゃんと改めさせないといけないとは思うのだけれど。
それでも、こんなふうに少年らしさを失わないシンを、アスランは可愛い思う。
いとしいと、思う。
アスランが彼と同じ年の頃は、本当に殺して殺されて、そんなことしか考えていなかったから。
「羨ましいのかな、俺は」
ほつりと呟いてから、アスランはまた、手元の回路に集中することにした。
『ザラ隊長出張のため、シフト変え』
パネルに現れた通知文に、シンはピシリと固まった。
隊長の不在は、１２月２４日１２時より、１２月２６日１５時まで。
しかも、シンのシフトは丁度２４日の夜に当たっている。
シフトといってもパイロットが４人しかいないこの艦だ。艦内にいさえすればいいのだが、それだってアスランがいないのだ、何の慰めにもならない。
「なんでですか、どこ行くんですか、なんでこの日なんですかっ！」
詰め寄るシンに、アスランは、んー、とか、あー、とか意味不明に唸ってから。
「お前のせいだぞ。２４日を空けようとして、図面の送付を今月末にしたいと返事をしたら、じゃあとにかく説明だけしろと・・・・」
「何の図面ですか」
妙に要領を得ない話に、シンの声は低くなる。
「この間、セイバーのコンソールを弄っていただろう。どうやら、あの時改造した基盤が、データ転送された本国の工廠で問題になったらしい」
あまりに間抜けな理由に、シンは怒るのを通り越して呆れてしまった。
この人の相手をしていると、やたらとこうやって脱力することが多い気がする。
「だから、あんまり弄るのやめろって」
「いや、そうじゃない。開発中の機体に実験搭載したいという話なんだ」
しかも、無駄に優秀だし。
「だからってなんで２４日なんですか・・・・」
まだぶつぶつ言っているシンの頭をぽんぽんと叩いて、アスランも声を低くした。
「仕方がないだろ、俺たちは戦争をしてるんだ、クリスマスも年末もあるか」
それを持ち出されると弱いシンは、うー、とひとつ唸っただけで、アスランの袖を掴んだ。
「なるべく早く帰ってくるよ」
ぽんぽんぽん、と、心地良いリズムで触れる、やさしい手。
「そしたら、めいっぱいヤらせてください」
いつもなら、速攻で拳が飛んでくるセリフにも、呆れた声だけが返って。
「考えとくよ」
シンは彼の胸をひとつだけ叩いて、アスランの袖を、離した。
「何、お前それで機嫌悪いの？」
そうして、クリスマスイブの夜は過ぎて。
コアスプレンダーの羽根の下で、なにやらいじけているシンに、ヴィーノは呆れて声を上げた。
ていうか、調整しないなら、早くそこどいて欲しい。
「まあ、そうだよなぁ。せっかく恋人いんのに、クリスマス仕事ですって逃げられたら、男としてなんか悲しいよなぁ」
「逃げられたわけじゃない」
うんうん、と訳知り顔で頷いたヨウランに、シンは唇を尖らせて。
「拗ねんなよ。明日には帰ってくるんだろ？恋人いるってだけですごい恵まれてるの、わかってるか？わかったらどけ、邪魔だ」
「うー」
結局そこも追い出され、とぼとぼと立ち去ろうとするシンの後ろで、ヴィーノがぽつりと呟いた。
「でも俺、自分よりでかくて仕事できる彼女って、ヤダなぁ」
ヨウランも、ちょっと笑って。
「彼女か？あれ」
「アスランさんの悪口言うなーっ！」
とたん、駆け戻ったシンは、ヨウランの襟首を掴み上げた。
「お前いっつも散々言ってるだろうが！」
「俺はいいんだよ！アスランさんの悪口言っていいのは俺だけ！」
「んなことで胸張んな！」
怒鳴りあう二人の横で、ヴィーノがしみじみと言う。
「胸・・・胸ある方がいいなぁ。やらかいの」
それにもシンは噛み付いて。
「アスランさんはなぁっ、胸はないけどナカやらかくって、でもぎゅって締まって、腰細くってイく時の顔なんかすっげーヤらしくって・・・」
「あ・・・それちょっといいかも」
「だろ！それでなんかイベントの時とか、プレゼントくれってねだると、口でしてくれたりもするんだぞ！？」
とたん得意げになったシンの襟を、今度はヨウランが捕まえて締め上げた。
「くっそ、なんでお前ばっかそんな幸せなんだよ！？」
「幸せじゃないっての！明日の午後まで会えないんだ！クリスマスすっぽかされて！」
「そこ！遊んでるんじゃない！」
ぎゃあぎゃあと騒いでいると、エイブス班長に怒られた。
「お前のせいだぞ・・・」
「うるさい」
仕方なしに仕事に戻ろうとしたところで、音高くアラームが鳴った。
「セイバー、予定を繰り上げて帰還します。カタパルトオープン。作業中の第４班は、安全のため退避してください。格納は第三ハンガーへお願いします」
カタパルトの開く振動が、真下の格納庫まで伝わってくる。シンは軽く揺れる床を蹴って、駆け出した。
「おーい、開閉時はカタパルト立ち入り禁止だぞー」
後ろからの声になど、振り向きもしない。
なるべく早く帰って来るって言ってた。
あの人のことだから、きっとホントに早く仕事を終わらせて帰ってきてくれたんだ。
「アスランさ〜ん！」
しかしコックピットから降りるなり、飛びついてきた恋人を、アスランは一撃で殴り倒した。
「なにすんですか！」
シンももう慣れたものだ。まだ避けることは叶わないが、すぐに飛び起きられるほどのダメージで済んでいた。
「公私を混同するなと、あれほど言ったよな、俺は」
「う・・・・」
しかしちょっと疲れた様子のその人に、ぎんぎんに睨まれてしまい、シンは半歩ほど後ずさる。
ベッドの上ならあんなに可愛いのに、仕事モードのこの人は、いつもなんだか凄く厳しい。
「まだ報告があるんだ、お前も仕事あるだろう」
「そ、そうですけどっ」
何だこの人、もしかして仕事のために早く帰って来たのか！？
「・・・終わったら部屋へ来い。終わるまで来るなよ！」
それでも、そう言った人の頬が、かすかに赤かったので。
「はいっ！」
シンは勢い良く返事をすると、びしりと敬礼をして、とりあえず訓練規定から終わらせようと、格納庫から駆け出して行った。
シンがアスランの部屋に駆け込んだとき、アスランはまだ戻っていなかった。
「ちぇ」
でも、それはいつものことなので、勝手にベッドに寝転がって、彼を待つ。
そうすれば、勝手に頬が緩んで。
「へへっ」
アスランからは、目いっぱいヤっていいと、お許しをもらっているのだ。
だからもう、今日は目いっぱい楽しませてもらわなくちゃ。
イブは逃してしまったけれど、プレゼント欲しいって言ったら、また口でしてくれるかな？
アスランが聞いたなら、「考えとくと言っただけだ！」と怒りそうなことをへらへらと妄想していると、時間の経つのも早くて。
やがて戻ってきた部屋の主に、シンはぴょん、と飛びついた。
「アスランさん、メリークリスマス」
「う？あ、め、めりいくりすます・・・」
一瞬ぽかんとしたアスランは、しかしすぐにふうっと微笑って、シンを抱きしめてくれた。
その後ろで、ドアがシュン、と閉まる。
上司の顔をした時にはあんなに厳しいのに、シンの恋人の顔になると、とたんにこの人は甘くなる。
「すまなかったな。これでもできるだけ早く済ませて来たんだが」
「いえ、俺も我侭言っちゃってすみません」
大好きな人との甘い時間だから、シンだって殊勝な顔もしてみせる。
そうしてそのまま背伸びをして、ちゅっ、とその人の唇にキスをして。
「プレゼントとかないですけど、代わりにいっぱいキスしてあげますね」
「嬉しいよ」
アスランが、本当に嬉しそうにそう言ってくれたから、シンはその人を引き寄せて、今度は触れるだけじゃない、深い深いキスをした。
「んっ、ん・・・・」
それがベッドへ誘うキスだと気付いたアスランは、慌ててシンの背中を叩く。
「っ、シン、待て」
「え、疲れてます？駄目？」
しゅん、と上目遣いになった恋人に。
「いや、シャワーを浴びて来るから。ちょっと待ってろ」
そう言って体を離そうとすると、逆にぎゅうっと抱きしめられて、捕まった。
「いいですよ、シた後、俺がちゃんと洗ってあげますから」
「よくな・・・・」
ぐだぐだと言う唇を、一度、キスでふさいで。
「俺、頑張ってちゃんと待ってたんですよ。もう待てません」
そうしてシンは、アスランをベッドへと引っ張っていく。
「仕方ないな・・・お前は、待ても出来ないのか？」
「犬ですか、俺は」
「待てが出来る分、犬の方がマシだな」
「うっわ、噛んでやる。舐めてやるーっ」
ばったん、と、アスランをベッドへ押し倒し、シンはそのセリフの通りに、滑らかな喉元に軽く歯を立てた。
シャワーを浴びたがっていた人の喉は、ほんのり汗の匂いがして、独特の肌の甘い味が、口いっぱいに広がる。
「うー」
唸ったのは、犬の真似ではなくて、満足から。
この人が、自分のものだという感慨が、溢れて気持ちよくて仕方がない。
「こら、服くらい、脱がせろよ・・・」
焦った様子のアスランに、自分が硬くなったモノを、その細い腰に押し付けていたことに気が付いて。
雄の無意識って怖ぇ、と、慌てて体を離して。
「しょうがないでしょう。お預け食ってたんだから」
「本当に・・・しょうがない奴だな、お前は」
呆れたようなアスランの声は、それなのに凄くやさしくて。
シンは、えへへと笑いながら、赤い軍服を剥いでいく。
「あ、アスランさんも勃ってる」
「仕方ないだろ・・・」
ふいっと目を逸らした人の、わずかに潤んだ目元にキス。
「嬉しいです。俺で感じてくれるってことでしょ？」
「キスのせいだよ・・・」
「え、俺、キス上手い？」
やったあ、と騒いだ後、ちゅ、ちゅっ、とキスを繰り返す。
そう、クリスマスプレゼントだから、いっぱいキスしてあげなくちゃ。
口ではめったに言わないけれど、アスランはシンのキスが大好きなのだ。
頬に、唇に、さっき噛み付いた喉元に。
肩に、胸に、二の腕に、わき腹に。
「んっ・・・シン・・・・」
そうして、シンを待って、ふるふると震えているものに。
「あっ・・・ぁ」
気持ちよさそうな声に、嬉しくなって。シンは一生懸命に舌を使う。
大きくなっていくそれにてこずりながらも、ちゅうちゅうと吸い付いて、舐めて。時々、軽く噛み付いてみたりなんかして。
「やっ、くぅん・・・」
先端に、きゅっ、と歯が当たったとたん、アスランの体がびくんと跳ねて。
とぷ、と溢れたものを、シンはこくんと飲み込んだ。
「んっ、濃いや。クリームみたい」
「ばっ・・・」
がんっ、と、振り上げられた脚に肩を蹴られて、ちらりと見えた狭間の奥に、ちょっと目を取られて。
でも、それはもう少し我慢、と、シンはその脚を捕まえるだけで、やめにしておいた。
「アスランさんも、プレゼント下さいよ」
代わりに、コレコレ、と、すっかり立ち上がった自分のものを指差すと、アスランはまるで女の子のように頬を染め、目を細めた。
「仕方ないな・・・」
「やったぁ！」
「騒ぐな、噛むぞ」
「えー、あ、そうだ、さっきの歯とか使ったのどうでした？」
「・・・同じのしてやる」
「ほんと？」
言い合いながら、アスランは頬にかかった髪をかき上げて、その仕草でシンをどきりとさせてから。
おもむろに起き上がって、シンの軍服のベルトを外し、ジッパーを開けてそこへ顔を寄せた。
「う・・・・わ」
何度してもらっても、やっぱりイイ。
喉の奥まで含むその技は、一体どこで覚えて来たんだとも思うけど。
柔らかい舌で包みながら、時折歯を当ててアクセントを付けるやり方は、さっきシンがしてあげたのと、きっと同じで。
「すっげーイイです。アスランさん、さいこー」
心地良く指に絡む髪を、さらさらと撫でながら、シンはその感触に感じ入り。
「ごめ・・・ちょっと、持たないんですけど・・・いい？」
自分を含んでふっくりと膨らんでいる頬をするりと撫でると、アスランは、またシンを深く咥えて、たっぷりと舌で包んでくれて。
「くっ・・・」
こらえきれず吐き出した口の中、嚥下する動きにも、感じる。
「ありがとうございます。・・・あー、もうアンタ、大好き」
ぎゅうっと抱きしめた体の、甘い匂い。
発情した、肌の匂い。
それを燻らせる胸に、ぐいぐいと額を押し付けて。
「これで・・・終わりじゃ、ないだろ？」
少し擦れた、艶深い声に、こくこくと頷いて。
「はいっ」
人目があるときには、ちょっとこういうことを匂わせただけで、ぎゃあぎゃあ言って怒るけど、ベッドの上のこの人は、甘い色香を放つ、イヤラシイ生き物になる。
自分からベッドサイドの引き出しを開けて、ローションと取り出し、シンに渡して。
「脚、開いてください、アスランさん」
そう言って軽く胸を押すと、シーツに背中を沈めたアスランは、恥ずかしそうに膝を立てて、足を広げてみせてくれた。
凄い、ヤらしい格好。
シンの目は、もうその奥に釘付けだ。
右足の膝裏を掴み、胸に付くほど引き上げて。曝したそこに、たらたらと直接ボトルからローションをたらす。そこを伝い落ちた液体が、シーツに染みを作って、その様子さえ、淫靡だ。
「あっためてからにしろよ・・・」
「大丈夫ですよ、すぐアンタであったかくなります」
シンの言うとおり、少年の指が触れる頃には、そこを濡らす液体は、アスランの体温であたたまっていて。
つるり、と人差し指を飲み込んだそこは、それどころではなく熱かった。
「んっ、ん・・・」
「気持ちいい？」
「ば・・・かや、あんっ」
こういう時に、余計な口を叩かせない方法は、キスの他にもう一つ。
シンは、指先でアスランの感じる場所を、ぐいぐいと責め上げた。
「やあっ・・・ン、はぁ・・・」
シーツを掴んだ指が震えて、こらえ切れず閉じた眦には、うっすらと涙が浮いている。
寄せられた眉と、忙しなく喘ぐ唇は、どうしようもなく艶やかで。
そうしてシンの指を飲んだそこは、熱くうねって腰が揺れる。
ＭＳに乗って、シンたちを指揮する時からは、想像もつかない淫らな姿。
二つの顔を持つ、シンの自慢の恋人。
「ローション、足しますね・・・指も足していい？」
「あっン・・・はや・・・く」
「・・・はい」
その可愛い様子に、思わず頬が緩む。
シンはそこに指を増やし、押し広げ、丁寧に柔らかくしていく。
楽しい作業だ。
「あ、ぁ、シ・・・ン」
押さえ込んでいたアスランの脚が、急に跳ね上がってシンの顎を蹴った。
潤んだ瞳がゆるりと開き、乱暴なおねだりに艶を添える。
「あんた、欲しかったらもっと可愛くねだってよ」
「うるさ・・・っ」
シンの腕を振り払った脚が、また、すうっと浮いた。
蹴られる、と思った瞬間、しかしその脚はシンの腰に絡み付き、そうしてしなやかな腕が伸びて、シンの襟元を掴んで引いた。
「これで・・・いいだろ」
言った唇が、シンのそれに噛み付いて。
長い、綺麗な指が、シンの軍服を開かせる。
「可愛いってか、色っぽ過ぎ・・・ヤバイよ、アンタ」
シンはたまらず上着を脱ぐと、手早くアンダーまでを脱ぎ捨てた。
そんな少年を脚の間に囲ったまま、アスランは濡れた瞳でそれを見ていて。
「可愛いのは、お前だよ」
そう、赤い唇を吊り上げて言うものだから。
「可愛いのはアンタです・・・ここなんか、こんなにカワイイじゃないですか」
掴み上げた脚の間、また、ゆるりと立ち上がったものの奥。
さっきまで散々弄られていたそこは、ローションでしとどに濡らされて、すっごく可愛くて、イヤラシイ。
アスランの望みどおり、シンはそこに、ぎゅうっと自分を押し込んだ。
「あああ・・・・ン、ぅんっ・・・」
「うわアンタ、そこでがっつくなよ！入んないだろ！！」
半ばまで入ったところで、ぎゅうっと締め付けられてしまい、シンは喚きながら細い腰を掴み上げた。
「やっ・・・も・・・っと、奥っ・・・」
「だから欲しかったら締めんなって！息吐いて！・・・ああもう！」
「ああっ、やっ、はぁっ・・・・」
焦れたシンは、締め付けを我慢してぐいぐいと奥まで犯し切り。
アスランは、背を反らせて啼き声を上げた。
その口元には、艶やかな笑み。
誘い込まれたと気付かぬシンは、そのまま、自分の言ったとおりに目いっぱい、アスランを愛してやったのだった。
満足しきった体を、長々とベッドに横たえて。
まだ荒く上下するその滑らかな背中に、シンは柔らかく、何度も唇を落としていく。
「ん・・・・」
ベッドに半分埋まった頬と、泣きすぎて、赤く腫れた目元にも、キス。
体を返したその人に引き寄せられて、唇に、キス。
「埋め合わせ・・・できたか？」
喘ぎにかすれた声でそう問われ、シンは勢いよく頷いた。
「はいっ！」
「よかった」
笑った唇に、また、キス。
「ほんとに・・・可愛いよな、お前は」
「どこがですか・・・」
とたんにむくれた唇に、今度はアスランから、キス。
「そういうところが可愛い」
「そういうとこってどこ？」
「うん、そういうところ」
「だからドコ！？」
食い下がる少年に、クスクスと笑いながら、アスランは思う。
この可愛い子のためなら、無理に仕事を詰めるくらい、なんでもない。
この子と、また来年もこうやって過ごせるといい。
この子が、今と変わらず無邪気でいられると、いい。
それは、儚い願いだけれど。
例えば、いにしえの聖人の聖誕祭が、今の世でも行われるように。
変わらないものが、あるといい。
この腕の中に、あるといい。
「あいしてるってことだよ」
「え、ええ？」
めったにないアスランからの告白に、シンは目を丸くして。
「あ、なんかわかった」
にこりと笑って、アスランを抱きしめた。
「こーゆーことだ」
そうして、深くキスをする。
「アスランさんも可愛い」
「どこが？」
「こーゆーとこ」
触れる、唇。
愛しくて、いとしくて。
このぬくもりが、このいとしさが。変わらないことを、願うこと。
それを、永遠というのだ。